三重と梅

三重県といえば伊勢神宮を思い浮かべる人が多いでしょう。古代から“日本人の心のふるさと”として崇敬を集めてきたこの地は、実は梅とも深い縁を持っています。奈良時代には『万葉集』に梅が数多く詠まれ、平安末期には歌人・西行が伊勢に庵を結び、梅を含む自然を愛でながら数々の歌を残しました。
そんな意外にも知られていない三重県の梅の名所をご紹介いたします。

伊勢神宮

代表的な梅の名所紹介

結城神社(津市) ― 忠義と梅が咲き誇る歴史の社

結城神社は南北朝時代の忠臣・結城宗広を祀る由緒ある神社で、境内には約2,500本もの梅が植えられています。紅梅・白梅が参道を覆い尽くすように咲き誇り、訪れる人々は「梅のシャワー」と呼ばれる圧巻の景観に包まれます。梅の香りが漂う参道を歩けば、まるで春そのものの中に身を置いているような感覚を味わえます。
滞在中の楽しみ方としては、毎年開催される「梅まつり」が大きな魅力です。期間中は地元の特産品販売や茶会、雅楽の演奏などが行われ、花を愛でるだけでなく文化的な体験も楽しめます。特に茶会では、梅を眺めながら一服のお茶をいただくことで、古来の花見文化を体感できます。さらに、地元の人々による屋台や物産展では、津市ならではのグルメやお土産を購入でき、旅の思い出を持ち帰ることができます。
結城神社の梅園は「忠義の物語」と「自然の美」が重なり合う特別な場所。南北朝の歴史を背景に咲き誇る梅は、ただ美しいだけでなく、歴史の重みを感じさせてくれます。滞在中は花と歴史を同時に楽しみ、文化的な深みを持つ観梅体験が可能です。
運が良ければメジロとの共演が見られるかも。

結城神社
結城神社メジロ

鈴鹿の森庭園(鈴鹿市) ― 職人技が生み出す芸術的なしだれ梅

鈴鹿の森庭園は、全国から集められた約200本のしだれ梅が咲き誇る庭園です。特に「呉服枝垂(くれはしだれ)」など名木の美しい枝ぶりは必見で、職人の技によって整えられた枝が優美に垂れ下がる姿はまさに芸術作品。ここは伝統園芸技術「仕立て」を継承・発展させるために造られた庭園であり、自然と人の技が融合した景観を楽しめます。
滞在中の楽しみ方は多彩です。昼間は青空に映える紅白のしだれ梅を散策路から眺め、梅のトンネルを歩くような体験ができます。夜間にはライトアップが行われ、幻想的な梅景色が広がり、昼とはまったく異なる雰囲気を味わえます。ライトアップされた梅の枝が闇に浮かび上がる様子は、まるで夢の中にいるような体験で、写真撮影にも最適です。
さらに園内では梅をテーマにしたスイーツやお土産が販売されており、観梅とグルメを同時に楽しめます。梅を使った和菓子や地元の特産品は旅の記念にぴったり。庭園内には休憩スペースもあり、花を眺めながらゆったりと過ごすことができます。滞在中は「芸術的な梅景観」「ライトアップの幻想美」「梅スイーツ」という三つの楽しみを組み合わせることで、充実した時間を過ごせます。

鈴鹿の森庭園夜
鈴鹿の森庭園昼

いなべ市農業公園(梅林公園) ― 東海最大級の梅の絨毯

いなべ市農業公園は、東海エリア最大級の梅林を誇り、約100種類・4,000本以上の梅が広大な敷地に咲き誇ります。見晴台から見下ろすと、赤・白・ピンクの梅が織りなす「梅の絨毯」が広がり、そのスケール感は圧巻。まるで大地に花のパッチワークが広がっているような光景は、写真映えも抜群です。
滞在中は「梅まつり」が開催され、地元グルメや特産品の販売、ステージイベントなどが行われます。特に地元食材を使った屋台グルメは人気で、花を眺めながら食を楽しむことができます。梅をテーマにしたスイーツや加工品も販売されており、観梅とグルメを同時に味わえるのが魅力です。ステージイベントでは地元の音楽や踊りが披露され、花と文化が融合した時間を過ごせます。
また、梅の種類が豊富なため、早咲きから遅咲きまで長期間楽しめるのも特徴。滞在中は「梅の絨毯を眺める」「地元グルメを堪能する」「ステージイベントを楽しむ」という三つの体験を組み合わせることで、花と食と文化を同時に満喫できます。広大な敷地を散策しながら、春の訪れを全身で感じられるのがこの公園の魅力です。

いなべ市梅林公園

混雑は苦手 そんなあなたへ 梅の穴場紹介

かざはやの里(津市) ― 長く楽しめる梅のガーデン

津市にある「かざはやの里」は、知る人ぞ知る梅の穴場スポット。ここには65種類・565本もの梅が植えられており、紅梅・白梅・枝垂れ梅が次々と咲き誇ります。種類が豊富なため、早咲きから遅咲きまで長期間にわたって楽しめるのが大きな魅力です。
滞在中は「梅まつり」が開催され、地元特産品の販売や軽食ブースが並びます。梅を眺めながら地元グルメを味わえるのは、旅の楽しみのひとつ。さらに、園内はバリアフリーに配慮されており、シニアや家族連れでも安心して散策できます。梅の花に囲まれながら、ゆったりとした時間を過ごすことができるのは、かざはやの里ならではの体験です。
写真映えスポットも豊富で、梅の花が一面に広がる小径や、紅白の梅が競い合うエリアは旅の記念撮影にぴったり。混雑が少ないため、落ち着いて花を楽しみたい方におすすめの穴場です。

かざはやの里

レッドヒルヒーサーの森(津市) ― 四季の庭園で楽しむ梅の彩り

「レッドヒルヒーサーの森」は、四季折々の花が楽しめる広大な庭園。その一角にある「梅のガーデン」では、約500本の梅が咲き誇り、春の訪れを告げます。庭園全体が広いため人が分散し、静かに梅を楽しめるのが魅力です。
滞在中は、梅の開花に合わせて散策イベントや花にちなんだ展示が行われることもあり、自然と調和した観梅体験が可能です。梅だけでなく、庭園内には季節ごとの花が植えられているため、梅と他の花々の競演を楽しめるのもポイント。梅の香りに包まれながら、四季の移ろいを感じられる贅沢な時間を過ごせます。
園内にはカフェや休憩スペースもあり、花を眺めながらゆったりと過ごすことができます。梅をテーマにしたスイーツや地元食材を使った軽食も提供されており、観梅とグルメを同時に楽しめるのも嬉しいところ。写真撮影にも最適で、梅の花と庭園の風景を組み合わせれば、旅の思い出を鮮やかに残せます。

レッドヒルヒーサー

観梅を楽しむには

梅の花はただ眺めるだけでも美しいですが、少し知識を持って訪れると楽しみ方がぐっと広がります。桜よりも早く春を告げる梅は、香りや品種の違い、生態の奥深さを知ることで「なるほど」と思える発見が多い花なのです。

  1. 香りの違いを楽しむ
  2. 梅は桜よりも香りが強く、品種ごとに香りの質が異なります。白梅は甘く上品な香りが漂い、紅梅は華やかな見た目に対して香りは軽やか。原種に近い野梅系は素朴な花姿ながら香りが濃厚で、歩いているだけで鼻先に春の訪れを感じさせてくれます。梅園では花の色だけでなく香りを嗅ぎ比べると、まるで香りの博物館を巡っているような体験になります。

  3. 花の形と咲き方
  4. 梅は一重咲きと八重咲きで印象が大きく変わります。一重咲きは素朴で清楚、古典和歌に詠まれる梅の多くがこの姿です。八重咲きは華やかで豪華、写真映えするため梅園でも人気があります。さらに枝垂れ梅は枝が優美に垂れ下がり、庭園では「梅の滝」のような景観を作り出します。一本一本の梅が個性を持っていることに気づけるのも観梅の醍醐味です。

  5. 名前の由来を楽しむ
  6. 梅にはユニークな品種名が多くあります。「思いのまま」は一本の木に紅白の花が咲く珍しい品種。「呉服枝垂」は絹のように枝が垂れる姿から名付けられた枝垂れ梅の代表格。「冬至梅」は冬至の頃から咲き始める早咲きの品種です。名前の由来を知ると、ただの花が「物語を持った花」に変わり、観梅が知的な楽しみになります。

事前に持っていくと便利なもの

観梅は屋外での散策が中心。快適に楽しむためには準備が大切です。

  • 歩きやすい靴:梅園は広く、砂利道や土の道も多いので必須。
  • 薄手の防寒具:梅の見頃は2月〜3月でまだ肌寒い。脱ぎ着しやすい上着が便利。
  • 折りたたみ傘やレインコート:春先は天候が変わりやすく、突然の雨にも対応できる。
  • カメラ・スマホ+予備バッテリー:梅は写真映えするスポットが多く、ライトアップ撮影ではバッテリー消耗が激しい。
  • 双眼鏡:枝垂れ梅や古木の高い位置の花をじっくり観察できる。
  • 花粉対策グッズ:梅の季節は花粉も多いので、マスクや目薬があると快適。

まとめ

梅は桜よりも早く春を告げる花。香りを嗅ぎ比べ、花形や品種の違いを探し、名前の由来に目を向けることで、ただの花見から「文化と自然を味わう体験」に変わります。一本一本の梅が持つ個性を見つけること、香りの層を感じ取ること、そして職人の手入れの背景に思いを馳せることが、観梅をより深いものにしてくれるのです。
春の訪れを告げる梅は、ただ美しいだけでなく、香りや形、歴史や人の技が重なり合う奥深い花です。名所の迫力も、穴場の静けさも、知識を持って訪れれば一層心に残る体験になります。
そして、バスツアーなら移動の心配なく、梅まつりの催しや地元グルメも含めて存分に楽しめます。香りを嗅ぎ比べ、花の個性を探し、文化に触れる――そんな観梅の心得を胸に、今年は三重の梅旅に出かけてみませんか。きっと「なるほど」と思える瞬間が、あなたを待っています。